あたりまえの日常

あたりまえの日常

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

この写真は、2015年に三重県臨床心理士会で作成した「災害対応マニュアル」の表紙です。当時私は被災者支援特別部会長として、この作成グループのリーダーをしていました。この翌年に熊本地震が発生し、熊本市の小・中学校に緊急SC派遣として、9週間にわたり派遣した臨床心理士のとりまとめや連絡調整などの被災者支援も行いました。私も被災地に入りたかったのですが、部会長だから三重県にいるようにということで後方支援にまわりました。

私たちが住む日本は、自然豊かな国です。春・夏・秋・冬という四季があり、四方を海で囲まれ、山があり、川があり、森があります。このような豊かな自然から私たちは多くの恩恵を受けてきました。一方で、これまでの歴史の中で、たくさんの自然災害が繰り返し起きてきたという事実もあります。地震、津波、台風、大雨、竜巻、噴火などです。(この7月に発生した熊本県南部地域で被災された皆さまにお見舞いを申し上げます。)

私たち日本人は、大切な人やものを、このような自然災害にことごとく奪われるという経験をしてきました。阪神淡路大震災や東日本大震災などがその例です。しかし、そのたびに復興を繰り返し、生活を立て直してきました。この繰り返し起こる自然災害が、日本人特有の無常観を形成してきたと言われています。この世のものはすべて変化し、消滅していくという無常観です。

とは言え、私たちが実際の被災者となった時には、目の前の悲惨な光景を見て、茫然と立ち尽くし、圧倒的な無力感に打ちひしがれ、あたりまえの日常の大切さをしみじみ感じるというのが現実です。そんな時、こころの専門家である臨床心理士が、目の前の被災者とどのように向き合い、その人の尊厳を守るために何ができるかを、常日頃から考えておくことが必要であることから作成したのがこの「災害対応マニュアル」です。

支援者の目線で作成したマニュアルですが、三重県臨床心理士会のホームページに掲載されていますので、よろしければご覧下さい。

そういえば、昨年参加した災害医療研修でご一緒した他県の臨床心理士の方が、「三重県の災害対応マニュアルをプリントアウトして参考にしています。よくまとまっていますよね。」とおっしゃって下さって感激した記憶があります。自分たちが被災した時のために作成したものが徐々に広がり、どこかで誰かのお役に立つことがあるのだということを実感した出来事でした。

これから台風の季節を迎えますので、みなさんも日頃から災害について考え、平時からその時のための準備をしておいていただければと思います。

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