危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

この写真は、今年12月3日に四日市市で開催された犯罪被害者等支援講演会で、「朗とともに生きる-こんなんありえへんよなあ、おかん-」というテーマでお話しされた、交通事件のご遺族・大西まゆみさんが、講演の最後に流されたスライドショーの表紙です。実はこのスライドショーは私が作成しました。

四日市市は、毎年、犯罪被害者週間に合わせて犯罪被害者等支援講演会を開催しています。それは、前半がご遺族もしくは被害者の方の講演、後半は私の講演という構成になっていて、昨年度から前半の講演者をどうするか四日市市の担当者からご相談をいただいています。昨年度は亀岡交通事件の中江良則さんにお願いしたのですが、今年度は大西さんにお願いすることにしました。大西さんが人前でお話しされるのは初めてなのですが、7月初旬にご提案したところ快諾して下さいました。

大西さんは、ちょうど5年前の明日(2018年12月29日)、ご長男の朗さんを交通事件で亡くされました。津市の国道23号線で、朗さんが乗っていたタクシーに時速146kmで走ってきたベンツが衝突し、朗さんを含む3名が心臓破裂などで死亡し、1人は治療期間が不詳という交通事件でした。危険運転致死傷罪で起訴されましたが、判決の結果は過失運転致死傷罪の懲役7年でした。

どうして、国道を時速146kmという高速度で車を走らせて4人も死傷者を出しているのに、危険運転に当たらないのでしょうか?大西さんは何度も何度も「それはおかしい!」と言い続けました。みなさんも「それはおかしい!」と思いませんか?

名古屋高裁の裁判長は、次のように判決理由を述べました。

「もちろん制限速度60kmの一般道を時速140kmを超える高速度で、しかも頻繁に車線変更を繰り返し、他の走行車両を縫うように走り抜けるという、公道である本件道路をあたかも自分一人のための道路であるかのような感覚で走行するという身勝手極まりない被告人の運転が、常識的にみて『危険な運転』であることは言うまでもない。しかし、危険運転致死傷罪は単なる高速度の運転ではなく、進行制御困難な高速度であることを必要とするのだから、被告人の運転が危険な運転であることは明白であっても、危険運転致死傷罪には当たらない」と。

危険な運転であることは明白なのに、危険運転致死傷罪には当たらないというのは、やはりおかしいのではないかと思います。そこで、大西さんは「高速暴走・危険運転被害者の会」や「危険運転致死傷罪の条文の見直しを求める会」で活動を続けられてきました。今回の講演会もその活動の一つになりました。

そして、この思いが危険運転致死傷罪の見直しを検討する自民党プロジェクトチーム(PT)に届き、12月20日に大西さんらご遺族と自民党PTのメンバーが首相官邸に出向き意見書を手渡した結果、岸田首相から「しっかりと受け止め、法務省で直ちに検討を開始させたい」という言葉を引き出したのです。

これでやっと危険運転致死傷罪の条文が見直されるのだなあと感慨深い気持ちになりました。と同時に、やはり傷ついたご遺族が活動しなければ犯罪被害者支援は変わらないのだという現実を再度突きつけられました。新あすの会の代表・岡村勲先生がおっしゃった「被害者が立ち上がる前に、被害者のための制度を作ってください。誰でもが被害者になる可能性があるのですから」という言葉を、改めて自らの胸に刻むことになりました。

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