認知行動療法(CBT)

認知行動療法(CBT)

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

不適切保育事案の緊急支援や、性被害防止講座の講師などの予定が立て続けに入り、2週間もブログの更新をお休みしてしまいました。いろいろ忙しくしていますと、心を亡くしてしまうようです。忙しいという字は、りっしんべんに亡くすと書くのも頷けますね。

さて、先月の終わりにジュディス・ベック先生(以下、「ジュディス」と略記)の講演とワークショックをオンラインで受講しました。ジュディスは、認知行動療法(以下、「CBT」と略記)を提唱したアーロン・ベック先生(以下、「ベック」と略記)の娘さんです。第1部は、父親であるベックとCBTの歴史の紹介でした。ジュディスは、「父のことをお話しするのが大好きです」と講義の最後に嬉しそうに言っていました。お父さんが大好きなのですね。

ベックと言えば、1963年に発表した『Thinking and Depression』という革命的な論文が有名です。うつ病において、無意識的動機モデルは正しくないモデルであり、うつ病患者は失敗を求めるのではなく、現実を歪めているだけなのだという仮説を提案し、自動思考を評価するための体系的な支援を開始したのです。

日本では、2004年に出版された『いやな気分よ、さようなら』が脚光を浴びました。私も出版された当時、とっても分厚いこの本を購入して、ふ~ん、なるほど~と納得したことを覚えています。抑うつを改善し、気分をコントロールするためのCBTが紹介されていました。もう19年前のことです。

最近の調査によると、この本を読んだうつ病の患者さんの約70%が、他の治療を併用することなく4週間以内に改善し、3年後もその良い状態を維持しているということですよ。CBTは世界で最も広く実践されているセラピーであり、世界で最も多く研究されている精神療法だと言えます。

ですので、私もカウンセリングのなかで、このCBTはよく使います。但し、クライエントと共にアジェンダを決めて、目標指向的で能動的な関与は促しますが、マニュアル通りに行うことはあまりありません。クライエント一人ひとりの課題は異なりますし、その違いに合わせてやり方を変えることが求められることが多いからです。

ジュディスも講義のなかで、今週は何をしたいかをクライエントに尋ねることはするけれど、マニュアルは使わないと言っていました。また、アメリカ人はホームワーク(宿題)という言葉を嫌うので、アクションプランという言葉を使っていると話していました。実に興味深いと思いました。また、私がこの講義で一番印象に残ったのは、ジュディスの誠実な人柄でした。「私はまだまだ未熟な治療者です」と繰り返し述べていたことが印象に残りました。素敵な方でした。

今回のオンライン講座の第2部では、リカバリーを目指す認知療法(以下、「CT-R」と略記)の紹介に重きが置かれました。CT-Rのクライエントの人生の最良の時期に焦点を当てて、毎回のセッションでポジティブな情動を呼び起こすようにする手法は、CBTと大きく異なります。また、治療のできるだけ早い段階で、アスピレーション(クライエントの願い)を明らかにし、次のセッションまでにアクションプランに基づいたポジティブな経験を同定しながら、クライエント自らがコア・ビリーフ(核となる信念)を変化させていくことを目指しています。

興味のある方は、『リカバリーを目指す認知療法(岩崎学術出版社)』などCT-Rを紹介するさまざまな本が出版されていますので、是非、読んでみてください。

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