水に挿した花

水に挿した花

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

最近よく聴いている曲は、中森明菜さんの「水に挿した花」です。YouTubeでたまたま見かけて、再生したらとても懐かしくなり、それでスマホにダウンロードして散歩中に聴いています。彼女の世界観は独特で、曲としての完成度も素晴らしいと改めて思いました。

そういえば、彼女の曲の中に「北ウィング」があります。♪Love Is The Mystery/翼ひろげて/光る海を越えるわ/すこし不安よ~♪という歌詞ですが、関西国際空港からニューヨークへ飛び立つ時に、このフレーズを歌いながら飛行機に乗ったことを思い出しました。

あれは、2001年の同時多発テロから2年ほど経った頃だったような・・・。ニューヨークで会計士の仕事をしている友人に会うために、関西国際空港からデトロイト経由でジョン・F・ケネディ国際空港に降り立ち、イエローキャブに乗って、グラウンド・ゼロのすぐ近くにある友人の働くオフィスまで一人で行きました。あの時はエミリーという名前のハリケーンに追いかけられながらの移動だったと記憶しています。

グラウンド・ゼロを見た時の衝撃は忘れられません。テレビで見た映像が思い出され、ここで2,977人の方が亡くなられ、25,000人以上の方が負傷した、その場所がここなのだという実感で心の中にズシンと重りが落ちたような感触がありました。「グラウンド・ゼロの隣りのビルにはたくさんのご遺体の一部が散乱してたのよ」という友人の言葉が今でも耳に残っています。

グラウンド・ゼロとはもともと爆心地という意味です。広島や長崎の原爆が投下された地点も爆心地と言っていますが、これを英語で言うとグラウンド・ゼロになります。まさに、同時多発テロでは2機の飛行機が突っ込み、ツインタワーが崩れ落ちた場所だから、グラウンド・ゼロなのです。そして、グラウンド・ゼロの近くにいた人ほど、受ける被害の大きさは甚大になります。

私は犯罪被害者支援をしていますので、トラウマ(心の傷)を説明する際に、宮地尚子さんの「環状島モデル」を使うことがあります。爆弾(犯罪)が投下された場所の中心地に穴(内海)ができ、それを取り巻くようにすり鉢状に陸地がある環状島をイメージしてください。グラウンド・ゼロの近くにいる人は被害が大きいので、内海に沈んで亡くなったり、または全く語ることができなくなったりします。トラウマについて語ることができる人は陸地にいて、助けを求めてすり鉢状の斜面を登って行くのです。爆弾の衝撃が大きいほど、その斜面の高さが高いので、登りきれなくて、途中で力尽きてしまう人が出てくることがあります。一方、支援者は外海からその環状島の内側を目指して、被害者を助けに行くのです。

同時多発テロから20年が経ちます。どれだけの被害者の方が助けを求め、支援を受けられているのか気になっています。環状島に取り残されている方はいらっしゃらないだろうか・・・。支援者は適切な支援を行い、被害者の心の中に花の種を蒔けているのだろうか・・・。そして、被害を受けた方はその花を咲かせることができているのだろうか・・・。それぞれの被害者の方の心の中に花が咲いていることを祈りながら、「水に挿した花」を今日も聴いています。

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