Take Home Message

Take Home Message

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

大学の教員をしていた経験から、毎年自分の業績をまとめる癖がついています。今年度の業績を振り返って、大学以外での講演会や研修会をパソコンで打ち込んでいたら、これまで180本以上の講師を務めたことに改めて気づきました。少数のグループを対象にしたものから、1,000人を超える人たちを対象にした講演会もあったな~とこれまでの記憶が蘇ってきました。

講演会や研修会をする際に、私はパワーポイントを使用します。そのスライドが話の道筋になりますが、話す原稿は作りません。その場にいる受講生のニーズや場の雰囲気に合わせて、話の内容を変えていきますので、同じパワーポイントを使っても、全く同じ内容にはならないからです。まさに直感型の話し手という感じです。

ただ1点心がけていることは、“Take Home Message”を何にするかということです。私の話を聞いて、何を家まで持ちかえってもらうかということだけは、最初に明確にしておきます。先日も被害者支援をしている行政担当者を対象に研修を行いましたが、その“Take Home Message”は、①被害者の話を聞く前に心を整える(自分の中心に意識を向ける)こと、②被害者に共感すること、③お互いのやり取りを第三者的に観察すること、の3つのポイントでした。この3つさえ覚えて帰ってもらえたらOKであるという目標を立てて、そのためにはどのように研修を組み立てればいいのかを検討します。

検討する手順は、まずは提示・説明法、問答・対話法、自主的学習法のいずれの教授法にするかを決めます。そして、学びの形式は一斉・集団、ペアグループ、個別学習にするのか、グループにする場合は等質集団か異質集団か、学びの活動は、見る、聞く、話す、読む、書く、実験、観察、調査、見学、ゲーム、操作、発表、劇、創作、ディベートのいずれにするか、使用するメディアはどうするか、学び方のタイプは系統学習か問題解決学習かなどを、テーマや受講生のニーズ等に合わせて組み立てていきます。

そして、内容については、受講生の思考過程を考えて、どのような話をすれば、どのように理解されていくのかをシミュレーションしながら、話す順番を考えていきます。思考過程には、分析、総合、比較、抽象、推論、一般化、類推、具体化、演繹、帰納などの思考過程がありますので、どの思考方法を使って考えてもらうかを、発達段階や学習方法を考慮しながら決めていきます。

“Take Home Message”は、基本的には5つのポイントまでと決めています。それは人間の記憶の特徴に由来します。マジカルナンバー7±2という言葉をご存知ですか?人間が一度に覚えられる数は5つから9つまでと言われていますので、“Take Home Message”は5つだけ、それだけ覚えて帰ってくれたら、あとは全て忘れてもらってもOKだという思いで講演会や研修会を行っています。

でも、受講生が書いてくれるアンケート結果を見ると、こちらの意図するようには覚えてもらっていないことがよくあります。その人のこれまでの知識や経験と情動的に結びつく内容だけが色濃く記憶されることが多いのです。人間は選択的に記憶する動物ですから。このように、180本以上の講演会や研修会を通じて、なかなか思い通りには伝わらないことを実感していますので、最近では「私が知っていることをお伝えにきました。まあ、お茶でも飲みながらリラックスして聞いてください、ハハハ(笑)」という気楽なスタンスでお話をするようにしています。

これからはオンライン講座なども計画していますので、もしよろしければお茶でも飲みながら気軽に受講してもらえたらと思っています。

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