ユーモア

ユーモア

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

私は被災者支援を行ってきた経験から、災害医療研修を受講することがあります。大規模災害発生時の多種多様な状況に適切に対応できる技術・知識を有する医療技術者の育成を図る目的で開催される災害医療研修ですので、東日本大震災や熊本地震はもちろん、台風の災害や新型コロナウィルス感染症のダイヤモンド・プリンセス号へのDMAT派遣で活躍されている医師などが講師として研修に当たります。

実際に現場に赴いている医師たちですので、研修の中で話されるエピソードも具体的でとても役立ちます。その中のエピソードを一つご紹介します。

医師たちは、被災地の避難所にドクターヘリで降り立つことがあるそうです。ドクターヘリと言えば、「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」というドラマをご存知でしょうか?主人公は山下智久さんこと山Pです。避難所にいるこどもたちは、ドクターヘリがやってくると期待に胸をふくらませて、運動場に集まってくるそうです。山Pが降りてくるのではないかとドキドキしているところに、降り立つのは頭髪が薄くなった中年の医師・・・。これぞまさしく「バーコード・ブルー」な~んて、と笑いを誘うエピソードを披露してくれました(笑)。

深刻な被災地の話をしているのに、笑い話にするなんて!とお怒りになる方もいらっしゃるかもしれません。でも、実は深刻な現場だからこそ、笑いやユーモアが必要なのです。

ドイツ語には、「ユーモアとは、にもかかわらず笑うこと(Humor ist, wenn man trotzdem lacht.)」という有名な表現があります。自分が苦しんでいるにもかかわらず、相手に対する思いやりとして笑いを示すという意味だそうです。

ノーマン・カズンズという研究者は、膠原病の治療に役立つのは積極的な笑いの感情であると言っています。実際に10分間大笑いすると麻酔をかけられたようになり、2時間は痛みを感じずぐっすり眠れたという研究結果があるようです。ユーモアと笑いによって、体の免疫機能も高めることができます。

ホスピスの職員は、ユーモアの感覚を持っていることが必要であると言われています。死を身近に感じながら仕事をする上で、ユーモアを持っていることで、バーンアウト(燃え尽き症候群)を回避することができますし、患者さんの痛みを軽減するためにもユーモアは必要なのでしょう。本当のユーモアとは愛と思いやりに満ちたものなのだと思います。

現在私は、犯罪被害者支援、被災者支援、子育て支援、リワーク支援、発達障がい児・者支援など、様々な対人援助に携わっていますが、今後は被害者を少しでも減らしたいと願い、加害者への支援を行っていきたいと考えていますし、最終的にはターミナル・ケアの臨床に進んでいきたいと思っています。ですので、やはりユーモアは不可欠だと思っています。どんなに苦しくても「にもかかわらず笑う」ことができるような支援者を目指したいと思います。

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