鳥の声

鳥の声

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

先日有名な俳優さんが自死されたというニュースが駆け巡りました。心からご冥福をお祈りします。このニュースを見て、自死されたひとりのお子さんを思い出しました。

私は心理の専門家として、自死したこどもの原因を調査する第三者委員会に委員として参加することがあります。若くして自らの命を絶たざるを得なかったこどもの心理的な経過を辿るという作業はとても辛いものがあります。少しずつ原因が究明されるたびに、胸が締め付けられる思いがこみ上げ、委員会の帰りの車の中で涙することもあります。

通常のカウンセリングでは、どのような辛いお話をお聴きしても泣くことはありません。それは目の前に生きていらっしゃる方の自己指示の能力を信頼しているからであり、そこに可能性を見出し、希望を持ちながらカウンセリングをしているからです。でも、亡くなってしまっているこどもの命を蘇らせることはできませんので、そこには悲嘆しかない・・・。

青少年の自死は、強い孤独感や置かれている環境に否定的な感覚を持ち、人生の出来事や失敗への恐れから悲観的になり、袋小路にはまってしまった時に、自殺衝動という形で自らの命を絶つケースが多いといわれています。青少年にとって、自死は別の人生を求める、つまり自分の人生を変える一つの方法に思われるのです。

青少年の自死は周囲の人たちに大きな衝撃を与えます。家族だけではなく、同年代の友人たちもショックを受け、アイデンティティの構築に打撃を受けることも少なくありません。そんな時は、自らの感情を思う存分表出させ、悲しい時には大きな声で泣けばいい。気心の知れた友人たちで集まり、今どんな気持ちでいるか共有すればいい。そこに寄り添うことができる大人がいればさらにいい。死を語ることはタブーではありません。心の奥底にしまい込まず、その悲しみを取り出して、思いっきり抱きしめて、悲しみが溶けるまで思う存分味わえばいいのです。

森美術館で開催された塩田千春展に行った時に、あるプレートを見つけました。
「人間の命は寿命を終えたら宇宙に溶け込んでいくのかもしれない。もしかしたら死は無と化すことではなく、何かに溶け込んでいく現象に過ぎないのかもしれない。生から死へ、消滅するのではなく、より広大なものへと溶け込んで行く。そう考えれば、私はもうこれ以上死に対して恐れを持つ必要がない。死ぬことも生きることも同じ次元のことなのだ。」

遺された者として、死をどのように考えるかはとても大きな課題です。亡くなった人を自分の心にどのように再び位置づけるかという作業が必要になってきます。でも、死は消滅ではなく、宇宙との連続体として考えることができれば、常に亡くなった人がそばにいるという感覚で私たちは生き続けることができるのではないかと思います。

私が委員として携わったお子さんは、鳥の声が好きなお子さんでした。鳥の声を聞くたびにそのお子さんの顔が浮かびます。ご冥福を祈って、今回の写真は青い鳥にしてみました。

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