言霊

言霊

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

先日、子育て支援についての研修会の講師を務めました。その際に前もって「出生前にダウン症など障がいがあるとわかった時に、その母親にどのように寄り添えばいいか教えてほしい」というオーダーがありました。

これは出生前診断に係る課題です。出生前診断とは、胎児の病気や異常の可能性を調べる検査と、確定診断となる検査の2種類があります。可能性を調べる検査は、母体血を採取してダウン症などの可能性を調べる母体血清マーカー検査等があります。確定診断となる検査は、羊水を採取して染色体異常を調べる羊水染色体検査等があります。

妊娠をすると出生前診断をするかどうかを医師に尋ねられます。私も妊娠中に聞かれましたが、発達や障害については専門的知識がありますので、もしダウン症の子どもが生まれたとしても育てるつもりでいましたから、出生前診断は受けませんでした。でも、専門的知識がない親のほうが圧倒的に多いですから、不安に思って検査をすることは自然なことでもあると思います。

障害のある子どもを産むかもしれないという可能性は誰にでもあります。なので、私が大学で教員をしていた時は、授業で学生に「もし妊娠をしている自分もしくは配偶者が、出生前診断でダウン症の子どもが生まれるとわかった時に、あなたはどうしますか?」というテーマでレポート課題を出していました。産む、産まないなどさまざまな意見がありました。

この課題を考える時に、2つの大きなテーマがあると思っています。それは、命の選別をしてもいいのかということと、障害児を持つ親のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)をどのように考えるかという2点です。

例えば、胎児がダウン症であるとわかったら堕胎する場合は、障害児は生まれてくるべきではないという価値観がそこにはあります。障害児は堕胎し、健常児は出産するという考え方であれば、そこで命の選別が行われているということです。障害を持って生まれてきた子どもが可哀想だから産まないと書いた学生は多くいました。本当に障害児は可哀想ですか?

そして、障害児を持つと生活が大変になり、自分の好きなことができないという親のQOLが下がると書いた学生もいました。障害児のできないことばかりに着目し、できない子どもがいることで、親がさまざまな苦労をするというのです。確かにご苦労をされている親御さんもいらっしゃいますが、そうではなく心豊かに人生を楽しんでいる親御さんもいらっしゃいます。

みなさんの中に、障害児は子どもも親も大変で可哀想で不幸という偏見はありませんか?「出生前にダウン症など障がいがあるとわかった時に、その母親にどのように寄り添えばいいか」を考える前に、障害について自分自身がどのような考え方を持っているかを今一度確認してみてくださいと、研修会の中で受講生にお願いをしました。

言霊(ことだま)という言葉があるでしょう?言葉には魂が宿っています。言葉にはあなたの価値観が乗っていくのです。だからこそ、誰かの支援をする際には、あなたの価値観を見直す必要があるのですね。

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