どうかしている

どうかしている

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

10月20日に中部弁護士会連合会定期弁護士大会シンポジウムが開催されました。基調講演者の泉房穂元明石市長やパネルディスカッションに登壇する朝日町事件のご遺族を、シンポジウム実行委員会に橋渡ししたご縁で、私も参加することになりました。

シンポジウムのテーマは、「犯罪被害者による損害賠償請求の実効性確保~債務名義の取得、債務名義に基づく回収に向けて~」という、何だか難しいテーマでした。チラシにはこのような説明がありました。「犯罪被害者の損害賠償請求について、加害者側から任意の履行を受けられない場合、民事訴訟等の法的手続を行う必要がありますが、回収可能性の低さなどを理由として諦めるケースも多いのが実情です。また、債務名義を得ても、犯罪被害者が現実の損害賠償を受けられない事案は多いといえます」

例えば、朝日町事件について言えば、刑事裁判終了後の民事裁判での損害賠償請求額は約7,767万円でした。加害者は刑に服していましたので、未だに一銭も支払われていません。損害賠償請求については10年の時効がありますので、支払われていない場合、被害者が再提訴を行わなければ時効を迎えてしまいます。この再提訴費用は被害者負担になります。

朝日町事件のような重大犯罪の場合の損害賠償の回収率は、約1~2%程度です。だいたい重大犯罪の服役年数は平均で12~3年ですので、加害者が服役中に時効を迎えるという理不尽な状態になっています。被害者は回収できないのであれば意味がないということで、再提訴をあきらめる場合が多いのです。こうなると制度として機能していないことが、皆さんにもご理解いただけると思います。

このような理不尽さをどうにかできないかということで、このシンポジウムが開かれ、泉元明石市長が基調講演をされたのです。明石市は犯罪被害者支援に特化した条例が平成23年に制定され、経済的支援においては、支援金、特例給付金、貸付金、真相究明についての支援、刑事裁判手続に参加する場合の旅費の補助、再提訴等の際に裁判所に対し支払う費用の補助、財産開示手続及び情報取得手続費用の補助、そして、損害賠償の立替支援金(上限300万円)などをすでに実施しています。

この泉元明石市長の講演は、いつもとても熱くて圧倒されることが多いのですが、今回の基調講演でもその熱量は素晴らしいものでした。ことに対象が弁護士だったので、「弁護士は人助けや社会正義のために働くのであって、金儲けのために働くのではない。被害者支援をすることは社会の責務であり、弁護士の使命であり、被害者が救済されることは当然の権利である。それを行わない弁護士は“どうかしている”」と何度も何度も繰り返し訴えていました。聞いている弁護士さんたちは、叱られていると感じているのではないかと心配になったほどです。

泉元明石市長の“どうかしている”という言葉が耳に残ったまま、関係者とランチをしました。そのときに出てきたパンケーキを見て“どうかしている”と思いました(写真)。10月20日は私にとって“どうかしている”日だったような気がしています(笑)。

with k 4E