トラウマ

トラウマ

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

トラウマインフォームドケアという言葉を聞いたことがありますか?

トラウマは心的外傷のことで、易しく言えば心の傷です。このトラウマという言葉はかなり一般的になっていて、何かしら心が傷つくと「トラウマになったわ~」なんて、自身の状態を説明する言葉として使われています。

でも、専門的には、地震や戦争被害、災害、事故、性的被害など、その人の生命や存在に強い衝撃をもたらす出来事を外傷性ストレッサーと呼び、その体験を外傷(トラウマ)体験と呼んでいます。実は、トラウマというのは、私たちの生命や存在に強い衝撃をもたらした出来事に対して用いられる言葉なのですね。

そして、このトラウマという概念がとても重要だと近年注目されていて、トラウマの有無にかかわらず、すべての人を対象として、トラウマの理解とトラウマが生活に及ぼす影響について一般的な知識を持ったかかわり(トラウマインフォームドケア)が大切であると言われています。

私は犯罪被害者支援に18年間携わっていますので、当初からトラウマやPTSD(心的外傷後ストレス障害)を意識してカウンセリングを行ってきました。それぞれのトラウマの内容に応じて、心理教育やカウンセリングなど、トラウマの影響を最小限にし、健全な成長や回復を促すための支援(トラウマレスポンシブケア)を行っています。

トラウマが重篤で、トラウマ症状に特化した介入が必要と判断された場合に、PTSD症状の軽減に効果の認められた心理療法などを通じた支援(トラウマスペシフィックケア)を行う場合もありますが、私は特定の心理療法を用いることはありません。いくつか特定の心理療法の研修を受けたり、専門書を読んだことはありますが、何だかどれもしっくりきませんでした。ですので、私はいつまでもトラウマレスポンシブケアの心理療法家のままです。まあ、それでいいかなあと思っています。

PTSDには自然寛解が多く、全く治療しなくても半数から70%程度は回復します。また、そもそもトラウマ的な出来事を体験してもPTSDにならずに、その衝撃から回復する人も少なくありません。また、特定の心理療法も、回復を阻んでいる要因を解消させることによって、自然治癒を促す回復モデルに従っていることがほとんどなのですね。

そして、被害を受けたことを全く無かったことにはできませんから、被害を思い出すことは必ずあります。記憶が無くなることはありません。この場合、回復するというのは、安全な記憶による恐怖記憶の上書きという記憶消去を通じて、記憶を思い出しても自分自身を傷つけることはなく、記憶自体を制御することができることを意味します。

しかしながら、どのような治療者でも安全に技法を用いることは大切です。それほどPTSDは重篤なケースがあるからです。解離性の意識障害がある場合は、事前に抗不安薬を服用してもらったり、現実感を維持させたりするなどの働きかけも必要になります。だからこそ研修を受けて、統一言語や手続きを身につけるのです。

ただ、それ以外の場合は、PTSDの治療には哲学的な問答などが必要になる場合があり、それぞれの被害者に合わせた言葉がけをする場面が出てきます。その人のmindではなくsoulに届くような言葉が回復を促すのです。これは、トラウマの本質を理解していないとできないことだろうなあと感じている今日このごろです。

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