よいお年を

よいお年を

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

2022年も残すところあと12時間ほどになりました。この1年を振り返ってみると、本当に激動の1年だったと感慨深くなりました。54年間生きてきて、今後の私の残りの人生を左右する出来事がたくさん起きたような気がします。

そんなことを考えながら大掃除をしている時に、ふと精神分析学の創始者であるフロイトの言葉が頭に浮かびました。「人間が生きるうえで大切なことは何だと思いますか?」と質問されたフロイトが「愛することと働くことだ」と答えたのです。

この回答を受けて、フロイトの弟子・エリクソンは『幼児期と社会』(1977)で、次のように解釈をしています。「彼が愛することと働くことと言ったのは、人間が性器的な生きものであり、かつ人を愛する存在であるという権利もしくは能力を失うほどに、一般的な仕事の生産性が個人を占有してはならないことを意味したのです」と。

フロイトは心の解釈を性欲と結びつけて述べることが多かったのですが、性欲は人間の本能的な欲求であり、性はいのちの根源でもあるので、人間が性器的な生きものであるという解釈はなるほどと思いました。また、人間は人を愛する存在であり、愛によって生きる意味を見出すのです。ここで重要なのは、愛される存在という受け身の愛ではなく、愛する存在という能動的な愛を述べていることです。

そうです。私たち人間は、生きるうえで愛することが大切なのです。人を愛する権利があり能力があるのです。しかし、愛によって苦しむこともあります。

仏教の四苦八苦の中に、愛別離苦があります。愛別離苦の原因は愛です。何かを愛するということは、愛する対象を失いたくないという感情を生み出します。でも、愛する対象を所有したり支配したりすることはできませんから、自分の思い通りにはなりませんね。この真理に逆らうように、失いたくない、思い通りしたいという感情がむくむくと湧き起こり、執着につながっていきます。あ~、苦しい!

愛する対象が国や土地だったりすると、戦争につながっていきます。ロシアとウクライナの戦争も、ある意味国盗り合戦でしょう。以前はロシアの領土だったのに……という一方的な論理で侵略や戦争を始めることもあるのです。

でもね、本来の愛は見返りを求めない能動的な愛のはずです。自ら愛することができる幸せを感じるのです。私の今年のテーマは、他人の恐れを背負わずに愛を映し出すことだったような気がします。それを実現できたかどうかは断言できませんが(笑)、少しはできたのではないかと感じています。今年もお世話になりました。よいお年をお迎えください。

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