城の崎にて

城の崎にて

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

志賀直哉の作品に「城の崎にて」があります。これは、主人公である自分が山手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をしたことから、その後養生をするために但馬の城崎温泉を訪れます。そこで、自分が投石することで死なせてしまったイモリなどの動物たちの死と生きている自分について対比して考えていきます。そして、生きていることと死んでしまっていることは両極端のことではないという感慨を持ち、そして命拾いをした自分を省みるという内容です。

この小説から城崎温泉は養生する温泉というイメージがありました。また、生と死という命の本質を考える場を提供する懐の広さがあるのではないかと想像していました。写真は城崎温泉の中心部の夜の景色です。何だか風情があるでしょう。こころとからだがホッとする空気感があります。また、静かな暗さに響くカランコロンという下駄の音が、この世とあの世をつないでいるようなそんな気持ちにもなりました。

城崎温泉は外湯めぐりが有名です。歌舞伎座を思わせる一の湯、恋愛成就の御所の湯、城崎温泉発祥の地まんだら湯、玄武洞をイメージした地蔵湯、コウノトリの姿に見える鴻の湯、湯温が一番高い柳湯、城崎温泉駅に一番近いさとの湯の7つの外湯があります。写真を撮影した日は、一の湯と柳湯の2つしか入浴できませんでしたが、ゆっくり養生することができました。

このような城崎温泉は、現在も次世代の文人によって、今も変わらず新たな文学を生み出しています。湊かなえさんの「城崎へかえる」や万城目学さんの「城崎裁判」です。2つの作品は少し趣向が変わっていて、「城崎へかえる」は本物の蟹の殻を思わせる特殊テクスチャー印刷で、「城崎裁判」は温泉に浸かりながら読めるように、耐水性の高いストーンペーパーを使用して、カバーはオリジナルのタオル装丁だということです。

城崎温泉には何か新しいことを生み出す力があるのでしょうか。お湯もいいので養生にも最適ですし、本当に素敵な場所でした。一緒に旅をした私と同じ名前の友人が、「城崎温泉もいいですけど、私は湯村温泉のお湯のほうが好きかも・・・」と言っていたので、次の機会には湯村温泉にも足を伸ばしてみたいな~と思っています。

そういえば湯村温泉は、吉永小百合さん主演のNHKドラマ「夢千代日記」の舞台になった場所です。このドラマは胎内被爆者として白血病と闘いながら母の残した芸者置屋を経営する夢千代の半生を描いた内容でしたが、温泉という場所は生と死がテーマになりやすい場所なのかもしれませんね。

with k 4E