無自覚な悪意

無自覚な悪意

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

タレントのryuchellさんが自死されました。可愛い方だったので、私は好きでした。どうして自ら命を絶たなければならなかったのだろうと残念でなりません。ありのままの自分で生きようとしていただけなのに。心からご冥福をお祈りします。

彼女の自死のニュースから、思い出したことがありました。以前、中学生がいじめられて自死したという重大事態の調査委員をしたことがあります。そのときに私が調査報告書に書いた「無自覚の悪意」という言葉を思い出したのです。

ryuchellさんにも「ブス」や「死ね」という言葉の暴力が向けられていたようですが、言っている本人はそれが悪意であることを自覚していないことが多いものです。自分なりの偏った正義を振りかざして、まるで世の中を正すかのように、他者に悪意を浴びせかけます。

児童に性暴力の加害を行った小学校6年生がこう言っていました。「俺を怒らせたあいつが悪いんだ」と、まるで自分が正しいかのように言い放ったのです。加害をしている側は自分のことしか考えておらず、それが相手の幸せを奪う行為であることを自覚していないのだなあと改めて実感した出来事でした。

昔、アナンという弟子がお釈迦様に、「悪いと知りながらつくる罪」と「悪いと知らずにつくる罪」とどちらが恐ろしいと思うかと尋ねました。お釈迦様は「知らずにつくる悪のほうがより恐ろしい」と答えたそうです。

なぜなら、自分のしていることが悪いと知らないと歯止めがきかないからです。そして、無自覚に、手加減なく、まるで自分は正義のヒーローのように悪をつくってしまうのです。逆に、自分の行いを悪だと知っていると、なるべく抑えようとするので、まだマシなのかもしれませんね。

この「無自覚な悪意」をこの世の中からどうやったら少なくしていけるのか、前出の中学生の自死からずっと考えています。考えてはいるものの、なかなか答えが見つかりません。私にできることは、目の前にいる人たちを大切にすることぐらいしかできないなあと思いながら、なるべく温かく優しい言葉を使うことを心がけていきたいと改めて考えた悲しい自死のニュースでした。

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