スマホと性暴力

スマホと性暴力

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

ある自治体の担当者から予算が取れたからということで、養護教諭を対象とした研修を依頼されました。内容は「被害・加害児童生徒が同じ学校に在籍し、学校の管理下で起こった性暴力被害の危機介入について」です。まあ、何と難しいテーマ!と思いました。実際に、被害児童への心のケアを行う際に、危機介入で学校に入ることがありますので、それを言語化するだけのことなのですが、誰にでもわかるように筋道を組み立てて、話す内容を整理して、わかりやすく説明するのが難しいなあと思っています。

ちなみに内容のリクエストは、学校で性暴力被害が起こった場合のタイムライン、被害児童生徒への対応(支持的かつ慎重な聴き取り、トラウマ反応への心理教育、本人からのニーズの把握)、保護者への対応(保護者への心理サポート、保護者からのニーズの把握)、学校の管理体制(性暴力被害対応チームの結成、保護者や教育委員会への連絡)、加害児童生徒への対応(事実確認と指導の区別、再発予防)、中長期支援(外部機関との連携、加害児童生徒との分離、本人や保護者との定期的な連絡、進級・進学時の引継ぎ)です。これを60分で話してほしいということでした。

はてさて、これを60分におさめられるかしら?と不安に思っていたところ、兵庫県の研究チームが2020年6月に発行した「学校で性暴力被害がおこったら~被害・加害児童生徒が同じ学校に在籍している場合の危機対応手引き」という資料を送ってくれました。これは内容がよくまとめられていて、とても参考になりました。関心がある方は是非ご覧下さい。

性暴力は魂の殺人と呼ばれることもあり、非常に深刻な犯罪です。早期に適切に支援を行うことが必要になります。支援をしている者としては、性暴力はとても身近な問題として常に捉えています。ただ、みなさんの中には、何となく性暴力というのはよく聞くけれど、自分とは関係がないと思っていらっしゃる方ももしかしたらいるかもしれません。

2018年にノーベル平和賞を受賞したアフリカ・コンゴ民主共和国の産婦人科医であるデニ・ムクウェゲさんの病院では、1999年から15年間で、性暴力被害者およそ4万2千人の診察を行いました。この原因として、コンゴに世界の埋蔵量の8割がある鉱石コルタンをめぐり争いが広がり、武装勢力は性暴力を使うことでこの採掘地域を制圧しているのです。この鉱石コルタンから金属タンタルが抽出され、これはパソコンや携帯電話などに使われています。いつも私たちが身近で使っている製品が、この性暴力と無関係ではないのですね。

最近、私はスマホを変えました。機種自体のデータの容量が少なくて、電源を入れた時のアップロードの際に容量オーバーで電源が入らなくなる恐れがあると言われ、仕方なく変えましたが、その時にムクウェゲさんのこの言葉が脳裏をよぎりました。「一人ひとりがそれぞれの場所でこの問題に影響を及ぼしているのです。行動を通じて、あるいは無関心を通じて。」この言葉を心に刻んで、新しいスマホを使っています。

with k 4E