ワーキングメモリ

ワーキングメモリ

オンラインカウンセリングのカナムーンです。

発達の特性を持つ人たちの中には、ワーキングメモリの機能が特に弱い人たちがいます。ワーキングメモリとは情報を処理する能力なのですが、もう少し詳しく言えば、意識して情報を処理することです。例えば、スマホを見ながら料理を作り、同時に子どもの話に耳を傾けるような能力です。一度に複数のことをしながら、一つのことに意識を集中することが非常に苦手な人たちがいます。

学習でいうならば、繰り上がりのある足し算を想像してみてください。873+378はいくつでしょうか?まずは一の位から足していきます。3足す8は11だから、一の位は1です。繰り上がる十の位の1を記憶しておいて、1足す7足す7で15、すると十の位は5で、繰り上がる百の位は1です。その百の位の1に8と3を足して12ということは、答えは1251ですという具合に、繰り上がりの数をワーキングメモリに意識して覚えさせながら、計算するという操作を同時に行います。これが難しいと暗算や筆算ができないのです。

ワーキングメモリの弱さから、仕事で苦労する人もいます。四六時中鳴り続ける電話の音や同僚のお喋りが聞こえているため、目の前の複雑な仕事に集中するのが至難の業である人たちがいます。医療や学校の現場に実習に行く大学生たちも同様に、さまざまな刺激がある中で作業をこなす過程でつまずき、私のカウンセリングに辿り着く大学生がちらほらいます。

そんな時は、どういう状態でつまずいたのかを詳細に聞き取り、それがワーキングメモリの弱さから来るものであれば、ワーキングメモリを鍛える訓練をすることがあります。

まずはネガティブ感情をコントロールすることから始めます。悲しい気持ちになると、その感情にワーキングメモリが引っ張られるため、目の前の事柄に集中することができません。例えば失恋した後には何も手につかないでしょう。別れた恋人のことばかり考えていると、何も記憶することができません。だから、ネガティブ感情を手放し、ポジティブ感情を喚起する練習をします。

その後は、自宅で簡単なレシピの料理を作ってもらうことを提案します。一つひとつの手順と材料を頭に入れながら、ワーキングメモリを稼働させて料理を作るように伝えます。料理というのは実はとっても複雑なため、ワーキングメモリが必要不可欠なので、訓練には最適なのです。

それから先日行ったのは、裸足になって足踏みしながら100から7ずつ引いていく暗算をしたり、歌を歌いながら計算したりなど、いわゆるデュアルタスクという2つ以上の作業を同時に行う訓練をしました。大学生は恥ずかしがっていましたが、「治療ですから」と言って真剣に取り組んでくれていました。

他にもいくつかワーキングメモリを鍛える方法がありますので、みなさんも興味があれば調べてみてはいかがでしょうか?加齢で記憶力が低下している人たちにも効果がありますよ、私のように(笑)。

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